はじめに
- こんにちは。AIインキュベーション室で室長をしています長谷川大貴と申します。 エクサウィザーズに入ってそろそろ5年が経過しようとしておりまして、ずっと事業開発やAIを活用したプロジェクトの立ち上げと推進等を数多く実施しておりました。 元々理系出身ではありますが、非エンジニア職です。
- これまでどんなことしてたの?と言うことをちょろっと知れる記事はこちらにありますので、もしご興味とお時間がある方があればご参照ください。
- 記事①:「実はここがエクサウィザーズの起源!」AIP西日本事業部ってどんなことやってるの?https://www.wantedly.com/companies/exawizards/post_articles/383676#=
記事②:垣根を超え、想いを形に--。関西からAIの力で情報・教育格差を無くしたい。https://note.exawizards.com/n/n602eb1dcb253
そんな非エンジニアがなぜこのブログに!?と思われるところかと思いますが、ずっと事業開発やビジネス側で活動してきたのですが、2022年10月から技術統括側のAIインキュベーション室と言う組織を立ち上げさせていただきエンジニアリングチームとして活動しています。そこで、「技術とビジネスを結び付け、新しい価値を創造する」と言う事に取り組んでおります。
- 例えば、エンジニアが「新しい技術シーズを開発したけどこれって課題解決に活用できないかな?」と言う技術を理解してニーズに繋いだり、企業等のニーズに対してそう言った技術シーズの蓄積から解決につながる提案を実施したりしています。
- 私自身はAIの研究者でもゴリゴリコーディングをしているわけでもないのですが、何件もの技術を理解し、活用のアイデアを検討しています。今回は技術を理解する時に私が心がけていることを少しシェアさせていただければなと思っております。 ビジネス側の方は「そういう感じで技術理解しているのかー」と思っていただいたり、エンジニア側の方は「こう言う観点で技術を伝えたら理解されやすいのかな―」と言うヒントに使っていただけると嬉しいです。
「こんな技術があるんですけど!」と言われたら(言いたくなったら)
- 技術の紹介や相談を受けるとき個人的に大事に思ってるのは双方のリスペクトと知的好奇心の強さです。リスペクトは仕事をするうえでは当たり前なのですが、ビジネスパーソンとエンジニアだったり、経営者とエンジニアだったりは一般的には思考方法が異なるので、双方向の尊重は前提にあるべきだと考えています。
- 知的好奇心については、私自身は元々強い方だと思っているのですが、「え?面白いじゃないですか!どんな技術なの!?どんどん質問しちゃっていいですか!?」と言うスタンスで聞けることが大事かなと思ってます。その方が、技術の理解や深堀のスピードが上がりますし、活用のアイデアも技術をヒアリングしていく中で出やすい雰囲気になると思います。技術を紹介する時に何となく相手が引いているなと思ったら、相手の知的好奇心をくすぐる情報をアイスブレイク的に放り込むのもありだと思います。
- 私がお客さんに技術を伝える時、知的好奇心をくすぐるために「ついつい誰かに話したくなる一ネタを入れる」と言う事をよくやっています。 例えば、最近話題のChatGPTは非常に高い精度でテキスト生成をすると言うモデルですが、文章を生成すると言う事は1文字誤りやノイズがあれば、意味が変わってくるケースがあります。実際にあった答えなのですが、「免疫力をつけるにはどうすれば良いですか?」と言う問いの答えの一つに「週あたり7時間以上の睡眠を心がけましょう」と言うのがありました。恐らく正しくは「日あたり7時間以上の睡眠を心がけましょう」だと思うのですが、1文字違うと途端にハードコアな働き方を要求する文章に変わってしまいます。 生成にはこう言う誤った情報を生成してしまうリスクが少なからずあるので、もし可能な限り情報ソースに忠実な文章要約をAIで実現したい場合は、上記のような生成系の技術ではなく抽出型要約(元の文章を抽出して要約を作る方法)を選択することもできますよと言う少しクスッとするエピソードとともに紹介すると「確かに」と技術選択の腹落ち感が増したり、「この要約AIのポイントは元の文章は維持して意味が伝わる内容に要約することなんですよ。生成系技術を使うとこんなリスクもあるんですよ~」とお客さんも社内に技術の特徴を紹介しやすくなりますので、そう言う一ネタを入れることをよくやってます。
「どんな技術か」を理解する(伝える)
- 前述のようなスタンスで技術をヒアリングしたり議論したりする中で私がおおよそいつも聞くようにしている要素を参考にご紹介します。技術の種類によっては他の色々なことももちろん聞きますが、下記の要素はどう言ったものであっても知っておくべきポイントだと思って聞いています。
- それぞれを網羅的に聞いていくというよりは、できるだけ自分も知的好奇心を満たすような流れで自然に埋めていけるようにしようとするコミュニケーションの工夫もよくしています。「その技術って○○○ができるんですよね?それって×××みたいな用途でも使えたりしますか??・・・でももしかしたらこういう時は使えないですか??」等々
1. 【概要】どんな技術?何ができる?
- その技術ができることやどのような技術であるかを自分の言葉で説明できる程度に理解したい。伝聞で自分が説明した時でもユーザーに技術の良さと面白さを伝えられるようにしたいと思い聞いています。
2. 【背景】なぜこの技術に注目した?開発しようと思った背景は?
- エンジニアがときめいたポイントや良いと思った背景があれば聞きたい。もしくはその他の理由「得意な技術だから、過去にしっかり実装した経験があるから等」があるのであれば、バックグラウンドを理解して、技術の魅力を伝えられるようになりたいと思い聞いています。
3. 【原理】技術や手法の仕組みやポイントは?
- 技術の原理や仕組み、実装の工夫やポイント等を理解し、技術ができることをある程度の深さの原理のレベルで理解したい。そうすることでユースケースを考えるときの実現性やユーザーの納得感「確かにそういう技術であれば実現できそうだ」を付加するために聞いています。
4. 【強み】既存技術と比べてすごい点はある?特徴はある?
- 技術の強みや特徴、他との差別化ポイントを把握して、「これまでできなかったことができるようになった」だったり、「これまで実現しようと思ったら時間や費用が掛かっていたものが少なくて済むようになった」等の技術の強みによってユースケースの付加価値が高いポイントを作るために聞いています。
5. 【限界】利用の前提や制約、注意点はある?
- できないことを明確にし、前提や条件がある時にはそれを含めてユーザーに提案し「嘘」や「誇張」、「過剰な期待値」を生まない誠実な提案を作成するために注意して聞くようにしています。
6. 【応用】技術の応用範囲は?こんなことには使える?あんなことには使える?
こう言う用途にも使えるか?工夫したらこう言うこともできるか?等々技術を応用可能な幅を具体的なユースケースの案を仮説として提示しながらできる範囲をイメージしていきます。ここでどの程度の幅でアイデアが出るか、具体的にユーザーが欲しいと思うものの仮説を出せるかがビジネスパーソンが普段接している顧客のニーズの質や量に差が出て面白い部分だと思います。
数が出て議論が盛り上がるケースもあれば、とても具体的かつ根が深いニーズにマッチして盛り上がるケースもあるので、ある程度色々なメンバーで議論した方が面白い応用案が出て良いと個人的には感じています。例えば、エクサウィザーズと言う会社は面白い会社で多様なバックグラウンドの方が多くいらっしゃるのですが、ビジネスとエンジニアで議論していて煮詰まった時に、ケア事業を実施している介護士の方から「その技術であればこういうことにもしかして使えないか?」と言う発言をいただいて思いもよらなかったユースケースが誕生することもあったりします。
「何に使えるか」を想像し、実際にユーザーに提案をしに行く
- 上記までで技術の概要が理解できれば、技術の強みや限界を加味したうえで、今まで蓄積しているニーズ等を思い返しながら「こう言ったユースケースだと欲しい人がいるのでは」と言う仮説を作ります。その仮説を作ったら実際ターゲットに思い描いていたユーザーに実際に提案しに行ったりディスカッションによってニーズを確認しに行きます。 そこで一発で「欲しい!」となることは稀で、反応を踏まえて提案のチューニングをしたり仮説の修正をしたりすることが多いです。結構この辺りが大変なのですが、こちらはまた機会があれば・・・
まとめ
- 技術をビジネスに転換していく際にはエンジニア、ビジネスパーソン、デザイナー等々のそれぞれのメンバーが技術と相手をリスペクトし、知的好奇心を持ってディスカッションを実施した方がポジティブな議論ができる
- 技術を伝える&聞くときにはある程度普遍的に共有した方が良い内容は事前に整理したり意識しながら共有した方が理解は加速する
- もし技術&ビジネス間の連携のお話やエクサウィザーズと言う会社に少しでもご興味を持っていただけましたら、下記サイトをご覧くださいhttps://hrmos.co/pages/exawizards/jobs?